『悪魔の羽根』ミネット・ウォルターズ著、成川裕子訳(創元推理文庫・1340円+税)【拡大】
力による不当な支配、スモールコミュニティーにおけるややこしい人間模様など、従来のウォルターズ作品のテーマが凝縮されながらも、これまでとは一味違う不穏な雰囲気をまとっている。その理由は本作がローカルとグローバルの間が瓦解(がかい)した混沌を描いているからだ。コニーが逃げ込んだ田舎町にも、遠く離れた土地で生まれた暴力の影がちらつき、コニーをおびえさせる。ウォルターズは逃げ場のない世界を読者に提示し、不安の境地へと誘うのだ。
だが目玉は不安感を煽(あお)るサスペンスだけではない。ウォルターズ作品のなかでもとりわけ熱く、迫真の謎解き場面が本書には用意されている。そこにあるのは非道に屈しない妥協なき精神だ。この謎解きシーンで、読者は冒頭の「幸せの秘訣(ひけつ)は自由である…自由の秘訣は勇気である」という言葉を思い起こすはずである。謎解きミステリーの形を借りて、ウォルターズはあなたの“勇気”を問う。(創元推理文庫・1340円+税)
評・若林踏(書評家)