【書評】『三重スパイ イスラム過激派を監視した男』小倉孝保著 (1/2ページ)

2015.7.11 13:04

「三重スパイイスラム過激派を監視した男」

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 ■諜報活動の複雑さと怖さ

 北ロンドン中央モスクは市街北部にあるイスラム教寺院で、私もたまにそばを通る。ロンドン警視庁のおひざ元の住宅・商業地区にあるこの施設が、イスラム過激派の世界的拠点だったとは驚きだ。

 そこではアブ・ハムザという、地雷の爆発で失った両腕に金属製の鉤(かぎ)形の義手をつけたエジプト人説教師が「アメリカ人を殺せ。ユダヤ人を殺せ。戦って死ねば天国に行ける」と信者たちを焚(た)きつけ、偽造パスポートでアフガニスタンの軍事訓練キャンプに若者たちを送り出していた。

 このモスクでハムザらの動向をスパイとして監視していたアルジェリア人、レダ・ハセインに毎日新聞欧州総局長が密着し、著したのが本書だ。もともと新聞記者だったハセインは、32歳のときアルジェリア軍から、空港爆破計画犯の嫌疑がかかっていると脅され、否応(いやおう)なく協力者に仕立て上げられる。その後、家族とともにロンドンに逃れるが、今度は自ら進んでフランス諜報機関のスパイになり、次に英国の諜報機関MI5に雇われる。イスラム過激派に対する怒りもさることながら、命を危険にさらし、体内をアドレナリンが駆け巡る経験に中毒になっていたのだ。

命までも雇い主に握られる人間の悲哀と苦闘

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