【KEY BOOK】「雪」(中谷宇吉郎著/岩波文庫、525円)
この本は最初は岩波新書の赤版だった。ぼくがド・ブロイの『物質と光』とともにどきどきしながら最初期に買った岩波新書なのだが、いまは文庫版になっている。本書の中身は中谷がとりくんだ雪の結晶をめぐる研究実験の成果の一部始終をのべたものだけれど、随所にわれわれの想像力を刺激する片言隻句が顔をのぞかせる。冒頭に江戸後期の鈴木牧之による『北越雪譜』(ほくえつせっぷ)が引かれているのも、懐かしい。そして最後の1ページが次のように結ばれるのだ。「雪の結晶は、天から送られた手紙であるということが出来る。そしてその中の文句は結晶の形及び模様という暗号で書かれているのである。その暗号を読みとく仕事が人工雪の研究であるということも出来るのである」。