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オートバイに命も哲学も人生も託した話 あの頃の『禅とオートバイ修理技術』 松岡正剛 (3/5ページ)

2014.4.15 16:40

この写真はぼくの古希の祝宴のときに藤本晴美チームが贈ってくれた段ボール・オートバイと、パーシングの『禅とオートバイ修理技術』の取り合わせ。段ボールをみごとに単車に仕立てたのは外山貴洋君(小森康仁さん撮影、松岡正剛事務所提供)

この写真はぼくの古希の祝宴のときに藤本晴美チームが贈ってくれた段ボール・オートバイと、パーシングの『禅とオートバイ修理技術』の取り合わせ。段ボールをみごとに単車に仕立てたのは外山貴洋君(小森康仁さん撮影、松岡正剛事務所提供)【拡大】

  • 【BOOKWARE】編集工学研究所所長、イシス編集学校校長の松岡正剛さん=9月14日、東京都千代田区の「丸善丸の内店内の松丸本舗」(大山実撮影)
  • 【BOOKWARE_松岡正剛】BOOK_MEETS_BOOK

 【KEY BOOK】「禅とオートバイ修理技術」上下(ロバート・パーシング著/ハヤカワ文庫、各864円)

 パーシングは電気ショック治療のせいで記憶を喪失していた。それまでは理学部の大学教授だった。あるとき、妻シルヴィアと11歳の息子クリスと友人ジョンとともに、4人で長いオートバイ・ツーリングをしようということにした。

 旅とキャンプと会話とオートバイ・メンテナンスを通しながら、自分の記憶が失われる前の自分をパイドロスと名付け、そのときの精神的な世界を徹底して辿(たど)ろうと決意したのだ。本書はその時々刻々のドキュメンテーションだ。

 ツーリングの途中でしばしば「シャトーカ」を試みた。19世紀アメリカの各地で開かれていた教育と娯楽を兼ねた野外講演会のようなものだ。パーシングはパイドロスに戻りながら、何度も「クオリティ」とは何かということを問う。機械修理のクオリティも、家族や社会の狭間にいる自分の心のクオリティも。

 やがてパーシングは禅が試みてきた「無の拡張」こそが、人生にもオートバイにも肝要だと気がつく。ところが本書刊行の5年後、息子のクリスが殺された。和訳本にはそのことを綴る序文がついている。それを含め、本書はいまなお燦然(さんぜん)と「心の暴走族」とは何かを問い続けている。

「ミッション(使命)をトランス(変革)していく」

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