ふいに水路が開け、思いがけず広い湿地に飛び出す。川が氾濫した跡だろうか、木立に囲まれた浅い池がひっそりしたたたずまいを見せている。水面の一角に、もこもこと立ち上がる枯れ草の妖怪のような一群があった。
北海道でもおなじみの“谷地坊主(やちぼうず)”だった。
≪北海道の原風景に息づく タフな暮らし≫
谷地坊主は釧路湿原など寒冷な湿地に見られるスゲ類の独特の群生だ。地下茎が旺盛なカブスゲなどが冬に凍結して株ごと隆起し、春には融雪水が周辺を浸食して形成されるといわれる。50センチほどの谷地坊主になるまで実に数十年もの歳月がかかるという。
秘密の湿地の主。そんな風情の谷地坊主を眺めながら、ウスリータイガでまたひとつ北海道の原風景に出会った思いがした。