三陸の牡蠣(かき)漁師は「魚付(うおつ)き林(りん)」の重要性に気づき、「森は海の恋人」として北上川上流の森林保全に力を注いでいる。そんな目で見れば、このタイガはいわばオホーツク海の恵みの源。“オホーツク海の恋人”といえるかもしれない。
ワシリーが谷地坊主の周りをゆっくり回ってくれたので、僕は喜んでタイガの谷地坊主を写した。だが彼が見ていたのは谷地坊主ではなく、周囲の水底に残された動物の足跡だった。何かが乱雑に歩いた跡があり、白く濁った水が、その主が去ってから間もないことを語っていた。
「シト エータ(これは何?)」
「イジューブリ(アカシカだ)」
ワシリーは餌となる水草を求めてアカシカが水辺に来ていることを確認すると、よしとうなずきながら引き返すのだった。