自由に蛇行する原始河川、河畔に続く深い針広混交林、シマフクロウの鳴き声…。タイガのさまざまな時と場所で、北海道がこの150年の近代化で失った風景に出会った。谷地坊主を抱くこんな何気ない水辺も、日本で失われた自然の象徴的な風景だろう。明治以降の開拓、そして高度成長期、湿地は“不毛な土地”として開発され、見放されてきた。今、北海道に日本の湿原の約80%が集中しているが、その面積は1920年から90年頃までの間に約60%も減少したという(「北海道の湿原」北海道新聞社)。
一方で近年、世界3大漁場ともいわれるオホーツク海が、アムール川上流の森や湿地から流れ出す滋養分で育まれていることに注目が集まっている。国境を越えた陸と海のつながり、つまり一見無関係に思えるほど離れた森や湿地の生態系が、下流の海や私たちの暮らし自体を支えていると分かり始めたのだ。