【KEY BOOK】「日本文化私観」(森儁郎訳/講談社学術文庫、1188円)
ぼくはタウトのドローイングが好きで、何度も見惚れてきた。「アルプス建築」も「星の建築」も「クリスタルハウス」も、みんないい。そこにはドイツ語でいうところの「クワリテート」と「ゲシュマック」がある。クワリテートは質感や風合のことを、ゲシュマックは「好み」のことをいう。日本語の感覚なら「数寄」に近い。
このことをタウトは『建築とは何か』では、「釣り合い」と「余地」とが世界と建築のすべてですと書いていた。
そのタウトが桂離宮や遠州の茶室や浦上玉堂の水墨画や文楽の人形を見て、心底驚いた。「釣り合い」と「余地」がここに結晶していた。そして最も大切にしてきた褒め言葉「ラインハイト」をそれらに向けた。「すがすがしく美しい」という意味だ。小堀遠州なら「綺麗きっぱ」と言うところだ。
諸君は本書を読んで、タウトがどのように日本の美の「際(きわ)」を発見したかを逐一知るべきである。しかしそのうえで、そこに痛烈な日本批判が綴られていることを、さらに知るべきだ。それは、日本人が欧米文化を移植するときになぜ「きわもの」化をおこすのかという批判なのである。「際」と「きわもの」のちがいが重要なのである。