読書にはさまざまなリズムが関与する。読書の醍醐味が読み方のリズムにあるというだけでなく、本が「言葉の楽譜」だとすれば、その中身は著者の指定を読み手のリズムにどのくらい変換できるのかにかかっているとさえ言えるのだ。
演奏者たちは楽器を弾きながら次の進行を引き取っていける。料理人は包丁を使いながらレシピの進行と味付けを加算する。そうなれるのは、そこに独特のリズムが進行している様子を体感できているからだ。サッカーのドリブルは足元のボールのリズムがゲーム全体の進行に対応できているからであり、サーファーが斜めの波乗りをできるのは「波という文章」を自分の体に引き取っているからである。読書だってそうなのだ。本とぼくのアタマと体とが照応しないかぎり、独特の読書なんて、できるわけがない。そのとき、青いボールペンや赤いサインペンが2つをつないでくれるのだ。