いや、そのほか関根雲停のカニ、吉田雀巣庵(じゃくそうあん)のトンボ、奥倉辰行の魚類も、服部雪斎の鉱物描写も、ものすごい。ともかく江戸博物画を見ることは、いつも涎(よだれ)が垂れるほど、ぼくをたっぷり堪能させてきた。
いったい何がこんなに堪能させるのか。まずは顔料(岩絵具)で描かれていることがいい。塗りたくっていないし、重ね塗りがない。次に筆致と描写力とがいっぱいに闘いあっている。そのため平板なカタログにならず、生き生きと見えてくる。さらには世界中の美術家たちが驚愕した浮世絵がそうであったように、見る者をそこへ誘いきるかのような構図が圧倒的な魅力なのである。
もし、一度もこの手の江戸博物画を見たことがないなら、どうしても見なさい。日本に自信がもてるようになる。
【KEY BOOK】「彩色江戸博物学集成」(上野益三ほか著/平凡社、19008円、在庫なし)
ともかくこの一冊を入手すべきだ。かつて「アニマ」に連載されていたものだが、江戸の本草学者と本草絵師たちが、時代順にほぼオンパレードしている。表紙のカニは細川重賢の絵だ。本草絵は日本におけるヴィジュアル・エンサイクロペディアだと思えばいい。正確をめざしつつも、見る者を驚かせたいという意欲に満ちている。そこが何度見ても飽きさせない。一家に一冊、江戸博物学。クール・ジャパンはそのあとだ。