ぼくはいまでも、中学の図書館の片隅で百科事典を次々に開いたときの興奮を忘れない。未知の国のどこにでも行けるピーター・パンになったような気分だった。次が鉱物図鑑、次が世界文学事典、次が明治ものしり事典だった。いまでもこの気分は続いている。いつか、ぼくも白川静さんに見習って、老境に入ってからのレキコグラファー(辞書編纂者)をもくろみたい。(編集工学研究所所長・イシス編集学校校長 松岡正剛/SANKEI EXPRESS)
■まつおか・せいごう 編集工学研究所所長・イシス編集学校校長。80年代、編集工学を提唱。以降、情報文化と情報技術をつなぐ研究開発プロジェクトをリードする一方、日本文化研究の第一人者として私塾を多数開催。おもな著書に『松岡正剛千夜千冊(全7巻)』ほか多数。「松岡正剛千夜千冊」(http://1000ya.isis.ne. jp/)