【BOOKWARE】
書の本はもともとは「手本」だった。手習いのための冊子だ。この手習いのことを学校ではいまだに「習字」と言うが、これはあえて「手習い」と言ったほうがいい。習字はたんに文字をそれなりの筆法に従って書くことだが、手習いはその一文字ずつがあらわす意味を学ぶために、自ら筆を執ることをいう。かつての寺子屋は手習いをしながら和歌や論語を身につけた。
同様に、書のことを「書道」と言うことが多いけれど、これも書芸とか書技とか書戯とか、たんに「書」と言うほうがいい。ぼくは書道家のことも書人とか書家というほうが好きだ。
日本には書を嗜(たしな)む人が多い。すばらしい習慣だ。お葬式での筆ペンだけではなく、1年に2、3度は筆をもったほうがいい。あの柔らかい毛筆と紙の滲みは格別だ。