【KEY BOOK】「一日一書」(石川九楊著/二玄社、1944円)
石川さんは現代の前衛的な書人でもあるが、ぼくは評価していない。しかし、その書論における発想と分析にはしばしば驚かされてきた。本書は、東洋における書のありようを一文字ずつを採り上げ、時代と国をまたいで論評していて出色だ。続巻を含めて座右に置かれるといい。書に親しむには筆をもつことが一番だが、そうでなくとも、ともかく見ることだ。それも一文字にひそむ運筆や筆勢や間架結構を見る。本書はその訓練をまことにうまく誘導してくれる。(編集工学研究所所長・イシス編集学校校長 松岡正剛/SANKEI EXPRESS)
■まつおか・せいごう 編集工学研究所所長・イシス編集学校校長。80年代、編集工学を提唱。以降、情報文化と情報技術をつなぐ研究開発プロジェクトをリードする一方、日本文化研究の第一人者として私塾を多数開催。おもな著書に『松岡正剛千夜千冊(全7巻)』ほか多数。「松岡正剛千夜千冊」(http://1000ya.isis.ne.jp/)