多くの命と家屋が濁流にのまれた広島市北部の土砂災害発生から2日目となった8月21日。被災地では住民らが大量の土砂によって進まない救出作業に焦りをみせつつ、祈るような気持ちで捜索活動を見守った。
安佐北区(あさきたく)で土石流に巻き込まれ亡くなった畑中和希ちゃん(3)。近所の女性(43)は、自治会の配布物を回す母親についてきた姿を覚えている。「人見知りせず『こんにちは』とにこにこしていた。笑顔が忘れられない」と涙を浮かべた。
幼稚園の副園長の女性(75)は「4月に入園したばかりで、やっと打ち解けてきたところだったのに」と話した。
安佐南区(あさみなみく)の県営住宅では大量の土砂が1階の部屋を直撃し、住人の真鍋美千子さん(68)の命を奪った。「明るい性格だった」。2階に住む20年来の友人、菅保美さん(68)は目元を押さえた。菅さんによると、1人暮らしの真鍋さんは清掃のパート従業員として仕事熱心で、東京で働く息子の話題になると、うれしそうにしていた。