被災地の中でも特に被害が大きかった広島市安佐南区の八木地区では自衛隊員が大きくため息をついた。あたり一帯は泥で茶色く染まり、岩や流木がごろごろと転がっていた。現場は山肌を切り開いた斜面の造成地で、もともと「日本一地滑りが起きやすいエリア」(兵庫県立大学の室崎益輝・防災教育センター長)と言われていた。
高校3年の男子生徒が行方不明になっている安佐南区の別の捜索現場でも、自衛隊員ら約50人が夜通しで泥のかき出しにあたったが、スコップで土をすくうたびに水を含んだまさ土が坂道を下ってくる。難航する捜索の様子を遠巻きに見つめていた同級生(17)は「見守るしかない」と祈るように話した。
無数の流木も
近接する民家3軒が土石流の直撃を受け、男女5人の安否が分からなくなっている安佐南区の緑井地区では流木が捜索活動を阻んだ。無数の木々が泥の上に折り重なっているため、消防隊員がチェーンソーを使って細かく寸断。それをバケツリレーの形式で脇によけて、ようやく重機の移動ルートを確保するという手順を強いられた。