安佐南区の自宅から土石流に流され、遺体で見つかった沢本範子さん(77)は穏やかな人柄が周囲に親しまれていた。小学校の元教員の夫と一緒に車でスーパーに出掛けるなど、夫婦仲のいい様子を近隣住民らは覚えている。
安佐南区の立川洋二さん(81)は、妻のサチコさん(82)とともに遺体で見つかった。洋二さんの職場の後輩で40年来の付き合いがある男性(67)は「退職したらみんな平等と言われたので、『たっちゃん』と呼ぶとうれしそうにしていた。秋には旅行をする計画だったのに」と肩を落とした。
≪足に絡む「まさ土」 捜索の体力奪う≫
被災現場に特有の軟らかい地盤は、行方不明者の救助・捜索活動にも大きな壁となって立ちはだかった。花崗(かこう)岩が風化してできた「まさ土(ど)」は、粒の直径が1ミリにもならないほどきめ細かく、多量の水を含んで足に絡みつく。現場では警察や消防、自衛隊員らが作業を続けたが、重い土砂と大量の流木、山肌からえぐり取られた岩石によって、思うように進まない。
地滑りエリア
「とにかくスコップが重い。必要以上に体力が奪われていると感じる」