それらの熱気から比較すると、シーズン最後のグランツールとなる「ブエルタ・ア・エスパーニャ」は、いつもどこか静かな印象を受ける。9月はもう来季の準備が始まる時期で、連日ビッグネームたちの移籍話がメディアをにぎわせる。また直後に控える世界選手権の調整レースとして参加する選手が多く、さらにはスペインの不況もあいまって、数年前からツール・ド・フランスの主催者「アモリ・スポル・オルガニザシオン(ASO)」が大会運営に協力する形でなんとか存続できている。
しかし、今年は例年以上に盛り上がりを見せた。なぜなら、ツール・ド・フランスの優勝候補とされながらも、序盤に落車してリタイアしたアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)とクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)がそろってブエルタ・ア・エスパーニャに参戦。ツール・ド・フランスの雪辱を晴らすべく、スペインの荒々しい山を舞台に、今季最高といわれるハイレベルで、見るものを熱狂させる戦いを連日繰り広げたからだ。