そして、今年の栄えある勝者は、ライバル、クリス・フルームとの山岳決戦を制し、2つのステージで優勝した母国スペインのヒーロー、アルベルト・コンタドールだった。ツール・ド・フランスでは落車により腓骨を骨折したが、驚異的な回復力でわずか1カ月半でレースに復帰し、不運の出来事からちょうど2カ月後、テーピングが残る脚で表彰台の頂点に立った。
グランツールは走り切ることだけでも名誉とされる過酷なものであり、けがからの復帰戦で勝つというのは、並大抵のことではない。戦いに敗れたフルームらライバル選手たちも、最後まで諦めずに果敢に挑んだ。彼らの戦いは、まさに“聖地”にふさわしい神聖さをもまとい、巡礼路を歩く人々も、足を止めて大きな声援を送っていた。(写真・文:フォトグラファー 田中苑子(そのこ)/SANKEI EXPRESS)
■たなか・そのこ 1981年、千葉生まれ。2005年に看護師から自転車専門誌の編集部に転職。08年よりフリーランスカメラマンに転向し、現在はアジアの草レースからツール・ド・フランスまで、世界各国の色鮮やかな自転車レースを追っかけ中。