自国のエースらが早々にメダル圏外に去り、安心して内村の演技に見とれることができたのだろう。さすがの中国人観客もこの日は「世界の内村」の妙技にため息を漏らした。
終わってみれば全6種目で15点以上を並べ、合計91.965の高得点で2位以下に大差をつけての大会5連覇。五輪も含め個人総合の連勝記録は31に伸びた。
大偉業にもマイクを向けられれば、「うれしいけど、まだまだかな。それはいつもと変わらない」。絶対に満足しない世界最強のオールラウンダーが今後目指すのは、なんと「オールスペシャリスト」。全種目での種目別トップが最終目標なのだという。
常識外れの目標も、内村ならと思わせてしまう。所属するコナミの加藤裕之監督は「内村は人間じゃない」とまで表現する。そうでも思わなくては、日々努力を重ねる人間がかわいそうだからの発言なのだろう。世界の誰も内村の高みに届かず、その彼は常にさらなる高みを目指しているのだから。