「古い家には、不在になりながらも、存在の記憶が残されている。それを呼び覚ますディテール(部分)が重要になってくる」とこだわる。記憶と物質は密接な関係があり、置き去りにされた道具や調度品、天井のしみなどが、生活の痕跡や時間の流れをとどめている。大巻さんはディテールから感じ取ったことを作品の中に盛り込んでいく。
十日町市の現場を訪れて感じたのは、雪の美しさと、雪の中で音の無くなる静かな世界。「そうした周囲の環境も巻き込んで、地域に根付いたアートをつくりたい」とイメージを膨らませる。ただ、一方では「地域のためにならず、地域をデザインしただけの作品ではいけない」と、あくまでも作品の魅力が失われないことにも心を砕く。
自然に近い風作る
大巻さんがこれまで取り組んできた創作の柱の一つは、「(自分が)作り上げた“非日常的な空間”のなかで、いかに違った時間を(体で)感じてもらうか」ということで一貫している。