【アートクルーズ】
人間にとって、希望(夢)、現実とは何だろう? 最新技術の美しい映像の世界で、希望を次々にかなえてみせる現代アーティスト、ヂョン・ヨンドゥ(45)。その映像は、リアル過ぎるがゆえに、達成できない現実も鋭く突きつけてくる。日本では初の大型個展「ヂョン・ヨンドゥ 地上の道のように」が水戸芸術館(茨城県水戸市)で開かれ、いま話題を呼んでいる。
切り貼りされた不思議な街角
息をのむのは「シックス・ポイント」だ。日本の絵巻物をたぐるように、ニューヨークの街並みの大画面が、右から左に流れていく。画面には奥行きがあるが、動画とは違って、立体感のない人や車がストップモーションで並んでいる。その影だけが、流れに合わせるように動く。
リトルイタリーやコリアンタウンに並ぶレストラン、洋服店、たばこ店…。店々の飾りや看板、タクシー、通りを歩く人々の姿が輝くような色彩を放ち、一枚の絵画のように美しい。
そして、映像の奥からインド、イタリア、中国、スペインなどから移住してきた人々のモノローグ(独白)が聞こえてくる。見たことのない不思議な映像を見ているうちに、夢の中で見知らぬ商店街に迷い込んだような錯覚に陥る。