瞬間の組み合わせ
映画というものはカットの集積でできている。監督が、「ヨーイ、スタート」と言い、「カット」というまでの瞬間の連続を組み合わせてひとつのまとまりとなる、それが映画である。
そのカットとカットの間にあるのが所謂(いわゆる)ところの、現場、である。
観客はけっして、現場、に立ち入ることができない。できあがった、作品、を観賞することしかできない。現場、を知るものはメイキングビデオというものもまた、作品、であることを知っている。
しかるにこの小説は小説作者の、また映画の、また読者の、現場、を提示してしまっている。そして完璧な作品となっている。凄いことと読み狂人は思ったぜ。文体にも工夫あるし、結末とかでは井伏鱒二とか思い出したし、すっげぇ、と思ったぜ。思ったわ。うるる。(元パンクロッカーの作家 町田康、写真も/SANKEI EXPRESS)