「にゅーっ」に至っては、彼方(かなた)まで広がる地面のなかから巨大な手が出てきて、いろんなものをつかんでは、土の中に引き込んでいく。連れていかれたものがどうなってしまったのかもわからない。落ちもなにもない。
ところが、子供は大喜びである。大人としては、ちょっと不謹慎というか、スマホよりも悪影響を及ぼしはしないかと少し心配になったくらいだ。が、バカ受けしたことはまちがいない。それは疑いようがない。
ちょっと危ない、そんな魅力の秘密をじっくり確かめてみたくて、平日の午後、本展の会場を訪ねた。それでも、場内は子連れのカート姿の親子が目立ち、あっちこっちで奇声を上げている。ふつうの展覧会なら「ご静粛に…」といきたいところだが、不思議なことに、これが実に自然なのである。
それどころか、長新太の描いた絵が一枚一枚、しっかりと壁に飾られているのを眺めていると、つい、こっちが「ギャー」と叫びたくなる。これはもう、本能のようなものだと言ってよい。そしていつのまにか、絵は、本当はこんなふうに、全身で喜びを表現しながら見るはずのものだよなあ、と日頃の態度を反省さえしてしまうのである。