【メジャースカウトの春夏秋冬】
名将がまた一人、高校野球の第一線から身を引くことになった。「選抜」「夏の甲子園」で計5回の優勝を誇り、今夏限りで勇退を表明した神奈川・横浜高校の渡辺元智(もとのり)監督だ。アマでの栄光だけではなく、松坂大輔投手(ソフトバンク)をはじめ、プロへ送り出した数々の教え子たちがその後も活躍を続けている。野球界への功績は計り知れない。
自ら考えるプレー実践
初めてお会いしたのは、1998年のことだった。ダイヤモンドバックスのスカウトに就任した年で、横浜が松坂投手や後藤武敏(たけとし)内野手(DeNA)ら有力選手をあまた擁し、春夏連覇を成し遂げたシーズンだ。
視察に出向いて驚かされたのは、工夫された練習方法と卓越した指導技術だった。
5、6月のことだったと記憶しているが、春の疲れを抜くため、松坂投手はノースローで調整していた。渡辺監督は自らノックバットを握り、松坂投手の至近5、6メートルからピッチャーライナーを次々と浴びせていた。