戦後70周年の夏、往年の名優、加東大介(1911~75年)の従軍手記「南の島に雪が降る」が相次いで舞台となる。ニューギニアで加東らが慰問劇団を結成した実話で、中日劇場の企画は柳家花緑(やなぎや・かろく、43)を主演に迎え、大和悠河(やまと・ゆうが、37)が共演する。2人は阪神大震災と東日本大震災の直後に行った公演が多くの人に喜ばれた経験を、戦地の舞台に重ね合わせて臨む。加東が生前に在籍した劇団前進座も上演、ともに平和の尊さを訴える。
役柄とだぶる祖父の姿
加東は太平洋戦争末期にニューギニアのマノクワリに赴く。激戦が続き、食糧も物資もなく仲間が死んでいくなか、三味線弾きや舞踊教師、喜劇俳優らと出会って演芸分隊を結成。苦労して衣装や小道具を作りジャングルに劇場も建てる。「瞼(まぶた)の母」などを上演。兵士たちはつかの間、故郷を思い、笑いと涙の中に希望を見いだした。手記は1961年に発表、同じ年に加東主演で映画化。森繁久弥(もりしげ・ひさや)や渥美清(あつみ・きよし)、伴淳三郎(ばん・じゅんざぶろう)ら当時のスターが総出演した。
前進座の舞台が原作にほぼ忠実なのに対し、中日劇場版は加東(花緑)の妻の女優、京町みち代と、原作にはないオランダ人宣教師の娘リリィが登場、大和が2役を演じる。脚本と演出は中島淳彦。