メディア研究でいう「カルチュラルスタディーズ」(メディア社会論)は1980年代に英国で盛んになったといわれるが、メディアと社会、ジャーナリズム(原意は「記録」)を社会的コミュニケーション過程として総合的に取り上げたのは「思想の科学」を嚆矢(こうし)とする。かつて、ジャマイカ出身で、英国のこの研究分野をリードしたS・ホール氏に出会ったとき、そのことを話すとびっくりし、学問の世界は平行進化するのだなと変に感心していた。
ホール氏はカリブ海の小国に生まれ苦労して英国に渡り、その視点からメディアが形成する大衆社会を注視、研究した。鶴見氏は母方の祖父に政治家、後藤新平氏、父に作家で政治家の鶴見祐輔氏を持ち、裕福でリベラリズムを満喫できる雰囲気と物理的条件のなかで育ち、米ハーバード大学を卒業していている。当然、そこには連日のごとく、多くの政治家や経済人が利権を求めてやってくるのを見ていたから、現在の政治・経済界の実相も見通していた。