最初は、下鴨神社の全てを撮りたいという強い思いがあったが、撮影を続けていくなかで、井浦さんのなかに変化が起きた。「『自分らしく』とか『自分流に』などといった自意識が消え、ありのままの下鴨神社と、そこで祈りをささげる人たちの姿を写してゆこうという姿勢に変わりました」
普通はなかなか入ることのできない神事や聖域にも足を踏み入れた。全ての所作が一瞬で終わる、取り返しのつかない一本勝負。自らも一緒に祈りをささげながら、緊張感とともに撮影を続けた。「この2年間の経験は、言葉ではとても言い尽くせない」という井浦さん。新木宮司はじめ、下鴨神社の人々との心の距離が近付いたことが、大きな財産として残った。ひたすら、神事の準備から終わりまで、同じ場所で、同じ時間を過ごす。それを何度も繰り返すうちに、迎え入れられるようになっていった。「新木宮司に教えを請いながら、下鴨神社を通してたくさんの学びがあった」。それは、未来に向けて変わってゆくために必要な、貴重な経験だったという。