人、食材、土地に力
このところ僕は高知にたびたび足を運んでいるが、この土地で最初に衝撃を与えてくれたのは、カツオのたたきである。いきなり食の名物が登場することに違和感を覚えるかもしれない。だが、これを食べた時のショックを言葉にするのは難しい。以前、食べたことのあるカツオのたたきとは全く異次元の、引き締まった食感と濃厚なうま味。塩を振って大きな炎で表面をあぶり、ニンニクと共に食べる。レアステーキのような食べ方をする高知のカツオは、魚というより肉に近い。これはもはや、ジビエである。「生き物を食っている」感覚になるのだ。
縁あって知り合った漁師の船に乗せてもらったことがある。雨をはらんだ暗灰色の雲と海が視界を分ける中、野見の港を出た。揺れる船上でカンパチの首に包丁を立て、活け締めにする。船着き場に大きなまな板を転がし、あらを海に投げながらカンパチを節におろす。ラフに見えるが無駄のない包丁さばきに、しばし目を奪われた。それは考えずとも手が動くという具合で、生き物を獲ることを生業にしている者の、体にしみついた技術であった。