安倍晋三(しんぞう)首相(右)に、署名を渡す訪日団長で前フィリピン日系人会連合会会長のカルロス寺岡氏=2015年7月22日(日本財団提供)【拡大】
【ソーシャル・イノベーションの現場から】
戦没者の遺骨収集事業を推進する「遺骨収集推進法案」が9月11日、衆議院本会議で可決された。今国会での参議院審議は見送られたが継続審議となり、「国の責務」として位置づけられる収集事業は今後、政府による集中的な取り組みが期待される。一方で、先の大戦から70年を経ても未処理の問題もある。戦後、現地に残されたフィリピン残留日本人2世の国籍問題もその一つで、腰が重い国に代わり日本財団は民間の立場でこの問題の解決を支援している。
首相に直接陳情
国籍未回復の残留2世は1000人超。現行法の下では高齢化する2世全員を救済するのは困難で、残された時間はあまりにも少ない。民間の支援だけでは限界があるとして7月、フィリピンの日系人会代表団7人が笹川陽平・日本財団会長とともに首相官邸を訪問。政府の協力を求めて安倍晋三首相に直接陳情し、2万7948人の署名と要望書を手渡した。
フィリピン残留日本人2世は主に、先の大戦終結までにフィリピンに渡った日本人移民の男性と現地女性の間に生まれた子供だ。日比両国の国籍法では当時、父親の国籍をその子供も受け継ぐ父系血統主義を採用していたことから2世は「日本人」である。