本場は薄くスライス
「試食しますか」。そう勧めてくれたラビーンさんの姿に驚いた。バウムクーヘンをハムのように薄くスライスしていたからだ。日本ではブロック状が多いが、違うようだ。「この方が繊細な味がよく堪能できる」とラビーンさん。口に含むと、しっとりとした感触と上品な甘みが広がった。
ドイツではバウムクーヘンはクリスマスやお祝いの際に贈る高級菓子。作ることができる職人は限られ、手軽に入手できるものでもない。「バウムクーヘン自体を知らないドイツ人も少なくない」(ラビーンさん)というほどだ。
そのため、ラビーンさんが過去、講演などのために招かれて日本を訪れた際、逆に日本でのバウムクーヘンの身近さに驚いたという。「食だけでなく、日本文化そのものが繊細だ。だからバウムクーヘンの繊細さが受け入れられているのではないか」。ラビーンさんは笑顔で、そう分析した。(宮下日出男、写真も/SANKEI EXPRESS)