撮影は日も沈みかけた夕暮れ時。水深5メートルほどの浅サンゴのリーフから、水深50メートル付近まで落ち込むドロップオフ(海中の崖のような地形)の水深10~15メートル付近に、ハナゴイたちは集まり、雄が体色を婚姻色に変化させて、微振動しながら雌にモーションをかける。
なかなか最後まで行き着かないのだけど、求愛行動を取る雄に誘われて、その胸ビレの間に入ると、激しく、そして短い求愛のダンスを踊り、一気に分かれる。その離れる瞬間に放精放卵が行われているのだ。その瞬間は、わずかコンマ何秒の世界だ。
≪感動的シーンは一瞬 切り取るうれしさ≫
一瞬のタイミングを逃すと、卵はおろか、2匹の絡み合うシーンさえもまともに撮影することはできない。新聞社勤務時代、Jリーグの担当をしていて、シュートシーンを撮影するときに、写真の中にサッカーボールが写っている瞬間を切り取るのがすごく難しかったのだけど、まさにそんな感じだ。しかも、ここは海中で体もカメラも固定してるわけではないし、ましてやハナゴイの求愛行動は、目の前の至るところで行われているから、シュートしようとしている奴が目の前に何人もいて、その中から瞬時にベストの人選(魚選)をしなければならない。何度もこの瞬間を観察してきた経験と、職人の技が要求されるのだ。