まだこの撮影に取り組んで3回しか潜っていないこともあり、ハナゴイの放精放卵シーンは撮影できなかったが、ハナゴイのように集団ではなく、単独で求愛行動を行うヘラルドコガネヤッコやヒレナガヤッコは、ターゲットが絞れるだけに、集中して狙いやすい。狙いやすいといっても、やはりなかなか撮影できるものではないのだけれど。ヤッコ系は、雌をその気にさせるために、雄が雌のおなかをチュチュチュっと刺激する「ナズリング」という行動を取りながら、少しずつ浮上していく。そして何かのタイミングで一気に雄と雌が離れるのだけど、その瞬間に放精放卵が行われるのは、ハナゴイと一緒だ。
今回、運良く両方のヤッコのメスが卵を出している決定的瞬間を撮影することができた。現地で長く撮影しているガイドにも、「ちょっと潜りにきて、なかなか撮れるものではないんですよ」とお墨付きをもらった。
プロとはいえ、そう言われると、うれしい。そして、そんな小さな魚たちの感動的な生命の誕生シーンを、これからも切り取っていければと思っている。(写真・文:海洋フォトジャーナリスト 越智隆治(おち・たかじ)/SANKEI EXPRESS)