政治家には瞬時に敵と味方を見分ける能力が求められる。米大統領選の共和党候補が西部コロラド州ボルダーに集まった10月28日の討論会の明らかな敵は「左傾化する主流メディア」だった。偏った司会進行に対する切り返しの巧拙は、世界最強の軍を率いる指導者となれるかどうか、その能力の一端を白日の下にさらした。
目を覆う質問の低レベル
「この討論会での質問の数々が、米国民がメディアを信頼していないことへの説明になっている。これはケージマッチではないんだ」。保守強硬派からの支持を集めるテッド・クルーズ上院議員(44)が司会者に食ってかかった。
金網でできた檻の中で戦うプロレスの「ケージマッチ」にけしかけるように、主催者のニュース専門局CNBCテレビが選んだ司会者たちは執拗に候補たちの失言や疑惑を取り上げた。
過去2回の共和党討論会や、民主党討論会に比べても質問のレベルの低さは目を覆うようなものだった。例えばCNBCのジョン・ハーウッド氏(58)と不動産王、ドナルド・トランプ氏(69)のやり取りはこうだ。