これに村上は「『人間の目から見た陰惨な結末』ではなく、『自然のどうにもならない力と人間の対比』みたいな感じは入れ込んだ」と反論するが、そうしたメッセージ性はもちろん、何を表現したいのかというテーマ性も希薄に感じた。
市場では成功したが
村上は、制作の集団化やプレゼンテーションなどマネジメントの重要性を前面に打ち出した自著「芸術起業論」(2006年、幻冬舎)で、「作品は未来に託す最高のタイムカプセル」と定義したうえで、こう書いている。
「死後にしか評価されない価値を、生前にひきよせるために金銭の力を使ったのが、ジェフ・クーンズをはじめ、80年代以降にデビューしたアーティストなのだとぼくは捉えています。その方針を、僕は自分でも実行しようとしているんです」
記者内覧会のフォトセッションで村上は、「五百羅漢図・白虎」の前で、群がるカメラマンに向かって踊るようなポーズを取り、おどけてみせた。その姿は、市場で成功を収めている「現代美術界の寵児(ちょうじ)」そのものだ。