戦後７０年で実現　事実上の「戦争画展」　「ＭＯＭＡＴ　コレクション　特集：藤田嗣治、全所蔵作品展示。」 (1/5ページ)

　【アートクルーズ】

　かたちとしては「所蔵作品展」だが、たんなるコレクション展とは、持つ意味がまったく違っている。戦後７０年という大きな節目を迎えて実現できた、事実上の「戦争画展」と言ってよい。

　回顧展でもできず

　東京国立近代美術館が、太平洋戦争期に主に軍から画家への委嘱によって描かれた「作戦記録画」の代表作を、計１５３点も保管していることは、かねて専門家のあいだではよく知られてきた。ただし、正確には「所蔵品」ではない。これらは敗戦後、アメリカが日本の軍国主義によるプロパガンダの産物として接収。本国に持ち帰った。それが１９７０年、「無期限貸与」というきわめて異例なかたちで返還されたのだ。ところが、７７年にこれらの一括展示が、なんらかの政治的な判断で、直前に突然の中止となってしまう。以来、作戦記録画はコレクションの一角で、細々と公開されるしかなかった。その間、日本の近代美術史における戦争期の美術の研究は、著しく遅れてしまった。

わざわざ戦争画展などとは言わずとも