米アイオワ州デモインで行われた政治集会で演説するドナルド・トランプ氏。相次ぐ過激な問題発言にもかかわらず、共和党の大統領候補指名争いで首位をキープしている=2015年12月11日(ロイター)【拡大】
イスラム教徒への逆風を自らへの順風として利用しようとするトランプ氏の行動は、2001年9月11日の米中枢同時テロの1週間ほど後に当時のジョージ・W・ブッシュ大統領(69)が出した次の声明とは対照的だ。
「米国の敵は多くのイスラム教徒の友人たちではない。私たちの敵はテロリストの過激なネットワークと、それを支援するすべての政府だ」
イスラム教徒全体を「敵」にまわすことで利益を得るのはISであることは間違いない。イスラム社会と西洋社会の「文明の衝突」というフィクションを宣伝することで外国人戦闘員を募集し、自爆テロを実行してきたのがISだからだ。
トランプ氏の危険な言説は、矛先が変われば戦前のようにアジア系への「黄禍論」に転じ得る。その兆しは日韓に対する「安保ただ乗り論」に現れている。日本も「トランプ流ポピュリズム(大衆迎合主義)」への支持動向に警戒を怠るべきではない。(ワシントン支局 加納宏幸(かのう・ひろゆき)/SANKEI EXPRESS)