≪被災地への思い伝える「鎮魂の舞」≫
戦いを終えてエキシビションが始まると、バルセロナの観衆は思う存分、メダリストのスケートを楽しんだ。なかでも地元のスター、ハビエル・フェルナンデスがソチ五輪でもみせた「エクササイズ」のパフォーマンスでスーパーマンに扮(ふん)すると、場内は爆笑に包まれた。
空気を一変させたのは、羽生結弦(はにゅう・ゆづる)である。
松尾恭伸氏の作曲による東日本大震災鎮魂曲「3.11」より、「天と地のレクイエム」。ピアノの独奏に乗せた羽生の感情あふれる演技に、場内は静まりかえった。
フリーの「SEIMEI」で陰陽師(おんみょうじ)の安倍晴明(あべのせいめい)を演じた「悪霊退散」の鬼気迫る表情もそこにはない。不安げで、悲しげで、それでいて力強く。ピアノだけによる演奏がシンプルであればあるほど、演技の情感が胸を打つ。
3.11。羽生自身、仙台のリンク上で被災した。スケート靴のまま避難してブレードを破損した。自宅は全壊し、家族と4日間、避難所で過ごした。練習拠点も失い各地を転々とした。