何より、自分が競技を続けていいのか、自問し続けた。多くの人が亡くなり、多くの人が家族や友人を亡くし、住む家をなくした。滑っている場合ではないのではないかと。
震災から1カ月もたたない4月7日、神戸市で開かれた震災チャリティースケートへの参加を、高橋大輔や荒川静香に誘われた。阪神大震災の地で聞いた大きな歓声と拍手、そして観衆の涙が、再び気持ちを、徐々にだが、競技に向かわせた。
ソチ五輪で金メダルを獲得し、羽生はこう話した。
「被災した人たちを勇気づけたいと思って滑ってきたけど、実は自分の方が支えられていた。金メダリストとして、すべきことも見えてきた。被災地のことを忘れないでほしいという思いを伝えるために、これからも滑り続ける」
羽生が強く魅力的なスケーターであるのは、複数の4回転を着実に跳べるからだけではない。思いをリンクで表出させる術と意思を持つからだ。(EX編集部/撮影:共同、AP、ロイター/SANKEI EXPRESS)