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忘却の街・渋谷にて、小さな悲劇を考察する 長塚圭史 (1/5ページ)

2016.1.9 10:00

ネズミの道とは関係ありません。嵐の前の静けさというような、渋谷へ向かう裏通り=2016年1月3日(長塚圭史さん撮影)

ネズミの道とは関係ありません。嵐の前の静けさというような、渋谷へ向かう裏通り=2016年1月3日(長塚圭史さん撮影)【拡大】

 【続・灰色の記憶覚書(メモ)】

 道の真ん中に、ネズミの死骸が転がっている。別段驚くこともないのだけれど、そういえば近年、路上で死んだ獣を見掛けなくなっていた。正月の渋谷のセンター街の横道で、午前10時にお目にかかるとは思わなかった。

 ネズミ(おそらくドブネズミ)はまだそれほど大きくなく、大きなけがをしたというでもなく息絶えていた。というように見えた。のたれ死んだような、ううっと声を上げて絶命したかのように、へたりと横たわっている。とにかく車にひかれたような形跡はない。けれど飢え死にしたというようなことがあるのだろうか。

 三が日を終えようとしている朝の渋谷は、まるでゴミの街だった。そこら中のポリ袋が、鴉(カラス)に荒らされて、どの道も生ゴミが散乱していた。わが物顔でポリ袋から魚や肉の欠片をつまみ出しては、カアカアと飛び回る。ドサドサと跳ね歩く。つまり食い物がないようには見えないということだ。この街で。小さなネズミの死骸のすぐ傍らにも、ほんの数メートルも行けばゴミの山がある。そこは鴉によって既に荒らされてはいるが、何もかも食い尽くされてしまったようには見えない。

 ではこの小さなドブネズミはどうして道の真ん中で死んだのか。

ネズミから始まるバイオハザード

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