忘却の街・渋谷にて、小さな悲劇を考察する　長塚圭史 (2/5ページ)

　ネズミから始まるバイオハザード

　鴉に殺されたというようなこともあるだろう。しかしそれならもっとひどいことになっていてもおかしくない。殺鼠（さっそ）剤。これは十分にあり得る。なにせ渋谷にはネズミがごっそり潜んでいる。最近あまり見掛けなかったのは、私が夜に繁華街を出歩かないというだけで、スクランブル交差点の植え込みなどには、巨大なネズミがウロウロしていたのをかつて何度も目にしている。それにあの朝の渋谷のゴミ風景を見れば、変わらずこの街はネズミ天国であろうと思われるので、そうしたネズミ対策として、強力な殺鼠剤が各所に仕掛けられている可能性は高い。

　まだ幼い小さなドブネズミは、愚かにも殺鼠剤入りの食物に齧（かじ）りつき、七転八倒して、くるくると道の真ん中まで踊り出し、親ネズミや兄弟ネズミがビルの陰から見守る中、最後にひとつぴょーんと宙に跳ね上がって、ばたり絶命した。

道端で出会う小動物への好奇心