後の「泣き虫先生」こと主将の山口良治(よしはる)はラインアウトでボールを投げ入れようとすると、客に足をたたかれ「頑張れ」と声援を受けた。タックルでタッチラインを押し出された選手が観客のカメラで顔面を切るアクシデントもあったという。試合終了後には興奮してなだれ込んだ観客が両軍選手らを肩車して練り歩き、健闘をたたえた。そんな伝説の試合である。
大学ラグビーを牽引(けんいん)役にサッカーを大きく凌駕(りょうが)していたラグビー人気は、95年W杯でニュージーランドに17-145の記録的大敗を喫したのを機に転落、低迷を続けてきた。「日本のラグビーはこんなものか」と白けてしまったのだ。
そんな悪しき記憶をぬぐい去ったのが、昨年W杯で世界中が称賛した南アフリカ戦の劇的逆転勝利だった。南ア戦の9月19日は、95年に79歳で亡くなった大西の命日でもあった。
もちろん偶然だろうが、そんな因縁に先人の執念を感じてみたくもなるのだった。(EX編集部/撮影:山下香、甘利滋、共同/SANKEI EXPRESS)