「お前さ、もっと可愛くなんないと、崖っぷちだよ。崖っぷち」
またひとつ、自分が理想の自分とは違うことに気づかされ、やけっぱちになって私が言うと、野良の子はドアの取っ手をがちゃっと引いて、すたすたと部屋を出ていった。あーあ、そういうところがかわいくない。私はひとりむくれて、ソファに寝転んだ。(劇作家、演出家、小説家 本谷有希子/SANKEI EXPRESS)
■もとや・ゆきこ 劇作家、演出家、小説家。1979年、石川県出身。2000年、「劇団、本谷有希子」を旗揚げし、主宰として作・演出を手がける。07年、「遭難、」で鶴屋南北戯曲賞を受賞。小説家としては短編集「嵐のピクニック」で大江健三郎賞、「異類婚姻譚」(群像11月号)で、第154回芥川賞を受賞。