身長152センチは、外国選手と並ぶと一人子供が交じっているようでさえある。ルール上、スキー板も短い。浮力、揚力を得るためには、板は長い方が有利である。男子で日本の日の丸飛行隊が世界を席巻し、スキー板の長さが身長が低いほど不利になるようルール改正された苦い過去もある。だが、高梨には一切関係ないようにみえる。
ジャンプは、自然との戦いである。どんなにいいジャンプをしても、風を得られなくては大きな飛距離は得られない。追い風に背中を押され、空中で失速するジャンパーが続く中で、高梨だけは追い風のなかでも飛距離を伸ばす。ムササビだって難しいはずなのに。
技術の差だという。ではどんな技術なのか。踏切のタイミングや空中姿勢を作る早さに高梨の特長はある。だがそれだけでは、追い風の中を飛ぶ秘密の解明には至らない。天才なのだともいう。だが、何がどう天才なのか。それがよく分からないから天才なのだ、ともいう。