一方、大筋合意後に農業の保護策は急ピッチで検討が進んだ。特にコメや牛・豚肉など聖域と位置づけた重要5分野は、農家の赤字補填(ほてん)拡大など財政出動を前提に踏み込んだ対策を示した。甘利明TPP担当相は「守りはできるだけ早い対応で安心感を培う必要がある」と指摘する。
高齢化に伴い国内の農業は衰退を続け、耕作放棄地は滋賀県の面積にも匹敵する約40万ヘクタールまで拡大した。海外で販路を拡大できる農業競争力の強化を求める声は少なくない。政府は農林水産分野の競争力強化策などに関し、平成28年秋をめどに詳細を詰める方針だが、思惑通りに競争力を強化できるのか課題は残る。
「不安払拭」に力点を置く大綱では、成長の原動力として物足りない。来夏の参院選後を見据え、より攻めに徹したTPP対策を早急に練り直す必要がある。(田辺裕晶)