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【浜松物語】うなぎパイ製造の春華堂(1)家族が集える夜のだんらん向けだから『夜のお菓子』…山崎泰弘社長
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--1969年に「うなぎパイ」が誕生して46年がたつ
「新商品の開発に取り組んでいた先代が、旅先で『どこの人か』と尋ねられ、浜松と答えたが、相手の人は浜松を知らなかった。『浜名湖の近くだ』というと『うなぎのおいしいところですね』と分かってもらえた。そこで、浜松名物のうなぎをテーマにしたお菓子ができないかと考えた。その頃はまだ珍しかったパルミエというフランス菓子のパイをベースに、職人がうなぎの形に似せようと試作を重ねた」
「当時は高度経済成長期で女性の社会進出が進み、家族が顔を合わせる時間も少なくなった。そこで、忙しい家族が集う夜のだんらんの時間に、コーヒーやお茶と一緒に食べてもらいたいという思いを込めて『浜名湖名産・夜のお菓子 うなぎパイ』と名付けた」
--菓子作りのモットーは
「昔からいう『手加減』が大切だ。『うなぎパイ』でも材料の混ぜ方や、数千層におよぶ繊細なパイ生地の折り方を、日々変化する温度や湿度に合わせて職人が調整している。砂糖も、生地を折る際に、職人が手で振っている。計量してみると、(生地表面に)ほぼ均等に砂糖が行き渡っている」
「原材料は常に厳しく選定している。バターは国産のものでなければ納得のいく味わいが出せない。砂糖も、商品に合わせて特別精製した粒の大きなグラニュー糖を用いている。粒の大きさが最適な砂糖でなければ、生地の膨らみ方が悪くなり、良い食感が出せないからだ。小麦粉も当社の仕様に合わせてブレンドしたものを使っている。コストはかかるが、お客さまに愛されている味は絶対に変えない」
--1887年の創業以来、128年の歴史がある
「創業者が『甘納豆』を考案し、露天式の菓子屋で売り出し評判になった。2代目も『知也保(ちゃぼ)』という卵形の最中を作り、全国でも珍しい菓子の実用新案を取得し、全国に名前が知れ渡った。他にないものを作りたいという社風があるのかもしれない。先代からは『24時間、物事を考え続けていなければ駄目だ』と教えられた」
--創業以来、「三惚(ほ)れ主義」を受け継いでいる
「『1つ、土地に惚れること。2つ、商売に惚れること。3つ、家内に惚れること』という創業者の教えを守っている。土地に惚れるとは、私たちがこの浜松の地に育てられ、商売をさせていただいていることを忘れないということだ。だからこそ浜松の土地を愛し、まずはこの地域の皆さんに感謝し、恩返しをするつもりで商売をしなければならないと考えている」
「商売に惚れ、商いを『飽きず』に一生懸命やるのは当たり前。先代は『会社と家庭はつながっていて、家庭で不和があると仕事にも影響が出る。家庭と仕事のバランスを取るためにも、奥さんとは仲良くしなければならない』と言っていた」
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【プロフィル】山崎泰弘
やまざき・やすひろ 1947年、春華堂の創業家2代目の山崎幸一氏の長男として生まれる。法政大社会卒。70年同社取締役として入社し、86年から現職。68歳。浜松市出身。