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仕事・キャリア
グローバル採用はいま 中途採用に頼らざるを得ない実態
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「グローバル人材の採用が活発化」といわれるが、その採用の中身について細かく語られることは意外と少ないのではないだろうか。どのようなポジションで、どんな仕事ができるのか?求められる語学力はどの程度?…今や当たり前のようにいわれる「グローバル採用」について、いま一度、徹底分析する。
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株式会社リクルートエージェント
グローバルサービス部 河本かなめ氏
2005年4月入社。以来、一貫して企業の採用コンサルティングを担当。これまでの担当分野は、外食、小売り流通、消費財、製造業など多岐にわたる。現在は、日系企業のグローバル化を担う人材の採用コンサルティング領域を担当する。
ロバート・ウォルターズ・ジャパン株式会社
グローバル人材支援室室長 大山良介氏
大手外資系人材サービス会社日本法人においてグローバルセールスマネジャー、日系企業のグローバル化支援を目的とした事業開発責任者を歴任。現在は、グローバル人材に特化した人材紹介を通じて日系企業のグローバル化を推進する。
ひと言で「グローバル人材」といっても、仕事内容はもちろん、勤務地や使用言語などによって動向は大きく異なるもの。そこで、まずはセグメントに分け、求人が増えているところについてリクルートエージェントに話を聞いた。上記の表で○がついている部分の求人が比較的多くなっているようだ。
日本語の使用だけで働ける仕事には求職者も多く、海外に興味のある若手ポテンシャル層を中心に採用に至るケースも多くなっている。一方で英語が必須の仕事については、求人数が多く企業の採用意欲も高いものの、転職希望者に求められる語学力の問題もあってなかなか採用が進んでいないという。
これまでは大手商社やメーカー、一部のネット企業が積極的にグローバル採用を行ってきたが、ここにきて小売りや流通、食品、医薬品、不動産などあらゆる分野で求人が増え始めている。それも、いわゆる大企業ばかりではなく、社員十数人くらいの規模の企業まで、積極的に採用意欲を高めているのだ。
「特に小売りや流通、飲食などは、これまでは新卒採用がメイン。ノウハウをしっかり伝え、自社のDNAを持った幹部候補人材を育成するスタイルでした。そのため、15年ほど前からグローバル人材を意識して採用してこなかった企業が多いのです。ここ数年でいざグローバル展開となったときに、中途採用に頼らざるを得ないという背景があります」(河本氏)
また、業界に関係なく25歳から35歳くらいの若手の採用が目立つという。
「確かに、業務経験豊富で語学力もあるベテラン人材を豊富に抱える企業は多くあります。しかし、大手になるほど次世代人材の育成も同時に視野に入れています。若手社員を2、3年間は国内で育成し、海外駐在を経験した後にマネージャーに任用というビジョンを描いているのです」(河本氏)
続いて、企業の資本別に見ていく。まずは日系企業の海外進出に伴うグローバル採用から。
企業の進出先を地域別で見ると、アジアを中心に、タイやインドネシアなどの東南アジアが急激に増えている。
「いわゆる生産拠点だったアジア諸国が、『消費の期待できるマーケット』として捉えられるようになり、あらゆる企業が積極的に進出を始めたことが大きいですね。中国がマーケットになり得るとわかったことで、タイやインドネシア、そしてブラジル・ロシア・インドなどのBRICs諸国が、次の期待できるマーケットとして注目を集めています」(河本氏)
各企業が募集する人材については、海外進出の段階ごとに異なる。以下の5段階に分けて整理しておこう。
(1)海外進出計画が立ち上がったばかりの企業
まだ海外拠点もなく、どこの国にどのようなニーズがあるのかを探る段階。海外に出向き、商品やサービスの営業活動をしながら情報収集し、“ビジネスの種”を見つけるための海外営業の募集が多い。
(2)海外進出が具体化している企業
具体的な商品・サービスの知識を持つ人材は豊富にいるが、現地のマーケティングはまだまだ不十分。リサーチ内容をもとに、商品開発など企画に落とし込める人材が必要となる。
(3)海外進出したばかりの企業
まだまだ現地法人の大半が日本人の場合、現地スタッフの採用を増やし、地域に根ざした組織として整えていく必要がある。体制作りのための人材採用ができる人事や、経理、法務といった管理系のポスト、または現地駐在できる若手営業職の募集が増える。
(4)現地法人を整えた企業
現地の人だけで完結させられる仕組みをいかに作っていけるかが、次なる課題。現地の習慣がわかっていることを前提に広く人材育成ができるマネジメント職や、具体的な技術について現地で教えられるエンジニアなどが求められる。
(5)海外進出がほぼ完了した企業
製造・販売・マーケティング・開発といったほぼすべての拠点が揃えば、現地法人のトップをどう育てていくかが課題となる。また、日本から現地をどうコントロールしていくかも重要に。海外事業管理を担うマネジメント層のポジションを募集する場合が多い。
(1)(2)(3)では海外営業の求人ニーズが最も多いが、段階を経て(2)はマーケティング、(3)は人事や経理などのニーズが強まってくる。一方でこんな話も。
「円高の影響もあり、あらゆる業種において海外でのM&Aが盛んです。そうすると、純日系な企業が、ある日突然にグローバル企業になってしまうこともあるのです」(大山氏)
その場合は、現地法人、本社機能ともに早急な体制構築の必要に迫られる。(2)から(5)を短いスパンで進める場合も多いという。