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伸びる企業・業界を分ける境目は一体何なのか
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業界や企業を取り巻く状況は刻々と変化を続けている。変化の激しい時代だからこそ、われわれに求められるのは、そうした変化をできるだけ正確につかむ力を持つことである。伸びる企業・業界を分ける境目は一体何なのか?衰退する業界を見極めるポイントとは?経営コンサルタント、株式評論家など3人のプロに、業界・企業を見抜く「方程式」をうかがった。
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百年コンサルティング株式会社
代表取締役 鈴木貴博氏
東京大学工学部物理工学科卒業後、ボストンコンサルティンググループに入社。分析力と洞察力を武器に企業間の複雑な競争原理を研究し、伝説のコンサルタントと呼ばれる。ネットイヤーグループの起業に参画後、2003年に独立、百年コンサルティングを創業。以来、大企業を中心にアドバイザーとして活躍。著書に『会社のデスノート』『ワンピース世代の反乱、ガンダム世代の憂鬱』(ともに朝日新聞出版)、『アマゾンのロングテールは、二度笑う』(講談社)ほか。
株式会社日経ラジオ社
「ラジオNIKKEI」放送記者、株式評論家
和島英樹氏
株式新聞記者を経て、ラジオNIKKEI放送記者に。現在、東証記者クラブ・キャップでもある。証券界での豊富な経験と人脈、綿密な取材を武器に、株相場を予想。その的中率の高さは業界でも有名で、雑誌への執筆や講演依頼も殺到している。出演番組は「和島英樹のウィークエンド株!」「マーケットカレッジ 集まれ株仲間!」。
ブルーマーリンパートナーズ
代表取締役 山口揚平氏
早稲田大学政治経済学部卒業後、1999年より大手コンサルティング会社でM&Aに従事。カネボウやダイエーなどの企業再生に携わった後、独立。企業の実態を可視化するサイト「シェアーズ」を運営し、証券会社や個人投資家に情報を提供(2010年に同事業を売却)。現在は金融とデザインを融合させた新しい信用創造の仕組みを考案中。専門は貨幣論・情報化社会論。主な著書に「なぜか日本人が知らなかった新しい株の本」(ランダムハウス講談社)」「企業分析力養成講座(日本実業出版社)」。
業界に劇的なイノベーションが起きようと、その企業が持つ優位性や強みが陳腐化しなければ、必ずしも廃れはしません。例えば自動車業界を例にあげて考えてみます。電気自動車は今後、需要が伸びるだろうと言われています。その際、電気自動車というイノベーションによって変化が起こります。燃料がガソリンから電気に変わることによって、何がどう変わるでしょうか。ガソリンを使う場合、エンジン内部で燃焼が起こります。電気自動車であれば、それに耐え得る鉄のボディーでなくてもよくなりますし、エンジンそのものの構造が変わり、ブレーキの作りも変わっていくでしょう。一方で、タイヤはなくなりません。窓ガラスも、ホイールも、メーターだってなくなりはしません。変化の激しい時代ですが、変化が及ぼす影響について一つずつ考えてみれば、なくなるもの、変わらず需要があるもの、新しく生まれるものが見えてくるはずです。
鉄道やアニメなど、固定ファンが多い業界や企業は強いと言われています。その反対に、固定ファンがいなくなれば、一気に斜陽産業になります。これは、ものすごく当たり前のことですが、未来を予測するうえではとても重要な考え方です。
そのキーワードとなるのが、いわゆる「団塊の世代」です。人口が多い「団塊の世代」がごそっと抜けた後に、その特定の層の人たちだけに頼っていた産業が一気に廃れる可能性があります。うまく下の層の人たちを取り込めていない産業ということです。しかし裏を返せば、うまくその下の層の人たちを取り込めている業界は、ちょっとやそっとではなくなりません。最近の例でいうと「山歩き」です。シニア層を中心に山歩きはトレンドですが、「山ガール」などの流行語からもわかるように、若い世代をうまく取り込んでブームになっています。団塊の世代が楽しむものだけでなく、世代を通じて広い層をうまく取り込んでいる産業は、衰退しにくいのです。
今も、そしてこれまでも、皆さんが生きてきた中でたくさんのブーム、トレンドがあったと思います。今でいえば、スマートフォン、SNS、韓流スター…といったところでしょうか。過去のそうしたブーム、トレンドを振り返ってみてわかることは、一過性のものではなく、少なくとも3年間は話題となって人々の生活に入り込めているものは、簡単にはなくならないということです。それどころか、ビッグトレンドとしてその語も影響を持ち続けるものになっているのです。例えばスマートフォンは3年以上前から話題となり、今でもすそ野を広げています。今後、普及する携帯電話のほとんどがスマートフォンになると言われているのは、こういった方程式から割り出しているものなのです。今、皆さんが熱中しているものは、果たしてどうでしょうか?話題になってから、3年間ユーザーが増え続けているでしょうか。そこにヒントがあると思います。