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これから伸びる企業・業界とは? 将来を見極める「方程式」
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業界や企業を取り巻く状況は刻々と変化を続けている。変化の激しい時代だからこそ、われわれに求められるのは、そうした変化をできるだけ正確につかむ力を持つことである。伸びる企業・業界を分ける境目は一体何なのか?衰退する業界を見極めるポイントとは?経営コンサルタント、株式評論家など3人のプロに、業界・企業を見抜く「方程式」をうかがった。
今後20年から30年のうちに、世界中の人口バランスは大きく変化すると言われています。特に注目したいのが、アジア。その中でも中国とインドでしょう。2030年には中国が15億人、インドでは20億人を超えると予想されています。今の日本の規模と比べても、単純計算で10倍以上の消費が見込めるというわけです。
数年前から日本企業のアジア進出の動きは活性化し、多くの企業が現地でシェアを伸ばしています。しかし、その一方で、現地の企業がその産業に参入し、淘汰されてしまった商品や企業も出てきました。今後のアジア進出には、日本でヒットしている“ブランド力のあるもの”を、いかに現地のニーズに合わせてカスタマイズし、展開していけるかがポイントになると思います。
少子高齢化社会に向けて、国内の生産人口は減っていきます。厚生労働省のデータによれば、2004年(6642万人)に比べて、2015年には42万人減、2025年にはさらに300万人減と言われています。企業としては、いかに生産人口を確保するかが、命運を左右するほどのものになる可能性があるわけです。だとすれば、例えば今以上に女性の登用を増やす、シニア層により目を向ける、長期滞在の外国人をうまく雇用に組み込むなど、従来の価値観から視点を変えていかないと、勝ち残れないのです。消費者ニーズの多様化、ターゲット層の変化などにおいても、今までのマーケティングが通じなくなります。逆に「これまでのマーケティングで重視されてなかった部分」にこそ、チャンスの目が埋もれているわけですから、そうしたところに目を向けられるように、柔軟な対応ができる企業しか伸びていけなくなるでしょう。特に大企業になればなるほど、社内にしがらみを多く抱えるために思い切った変化ができなくなっています。もちろん経営陣の手腕にもよりますが、大企業に対しては、どれだけ変化に対する柔軟性があるかを厳しく見ておく必要があります。
国内の消費が飽和状態で、生産人口の比率も下がっています。そろそろ、国が抜本的な政策を打ち出す可能性が高いと思います。産業人口の確保のために支援金を出すといったことは、現実的に考えて十分に起こりうるはずです。例えば、農業です。震災などの影響もありますが、農業人口の減少は目の前に迫った大きな危機です。しかし、国の政策が変われば、一気にチャンスが広がります。現在、閉塞感がある業界でも、国策に乗ることで、180度状況が変わることは大いに考えられますから、日々のニュースに注目してください。
企業の状態を知るために効果的なのが、営業キャッシュフローと投資キャッシュフローをまとめた「キャッシュフロー・マトリクス」を見ることです。
営業キャッシュフロー(稼ぎ)が多く、投資キャッシュフロー(投資)がマイナスになっている(投資にお金をかけることができている)のが健全な状態で、企業としては安定期です。しかし、投資をしなくなり、それまでに投資したものを手放すようになれば投資キャッシュフローがプラスに転じます。こうなると、企業は停滞期に入ります。そして投資を行えていないために稼ぎも増えていかず、営業キャッシュフローがマイナスになっていく。つまり後退期に入ります。プラスに転じるためには投資をしなければならず…という繰り返しが起こっていくわけです。こうした、営業キャッシュフローと投資キャッシュフローがマトリクス上のどのポジションにいるかを見ていけば、企業の状態がわかり、今後の動きも推測することができるのです。
キャッシュフロー・マトリクスを簡単に見られる専門サイトもありますが、四季報や財務三表(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書)などを見て、自分で調べることも難しくはありません。さらにもっと詳しく企業の内情を見たい場合は、投資の内訳を確認してみるのもいいでしょう。投資には、「メンテナンス投資」「開発投資」「純投資」の3つがありますが、そのうち、工場などの設備環境や規模拡大のための土地・建物購入といった「開発投資」にどれくらい投資しているかに注目してみると、より今後の伸びを予測しやすくなります。
業界と呼ばれるものが完成するまでに、一般的には50年くらいかかると言われています。最初の10年くらいで、もやもやしたものが業界としてまとまっていき、その後10年から30年くらいかけて広く認知されていき、そこからさらに10年くらいかけて成熟、そして新陳代謝が始まると言われています。伸びる可能性が高いのは、例えば「携帯電話でできるゲーム」のような、まだ業界名が定まっていない業界。そして、誰もが名前を知っている一方で、新陳代謝を求められているような「製紙」「鉄鋼」「テレビ」などの業界。この2つです。
成長や再生のきっかけをつくるのが「イノベーション」です。イノベーションとは、「同じことを10分の1のコストでできるようになる」もしくは「同じコストで10倍価値のあることができるようになる」ことだと言われています。今後10年を見据えて、いずれ業界を生み出しそうなイノベーションがどこに起こりそうか、もしくはすでに完成された業界において、新陳代謝を促すイノベーションがどこに起こりそうかに注目してみてください。
ファストファッションと、高級ファッションブランドは、どちらも「衣料品業界」という括りで見られています。ファストファッションの商品は、今や多くの人にとって日常生活の一部になっていて、あって当たり前の、簡単に購入できるものになっています。一方、高級ファッションブランドの洋服は、「寒さをしのぐ」ために買う衣料品というよりは、「自己表現」や「社会的欲求を満たす」といった側面が多いと言われています。つまり、それぞれは別の価値観に合わせて商品を提供しているわけで、そもそも同じ業界という括りで語ることに無理があるのです。
つまり、価値観が多様化しすぎた現在において企業の成長性を測るには、業界というわかりやすい枠だけで物事を捉えないことです。ファストファッションのように「大多数の人々の欲求を満たす存在になり得るか」を見抜くことが、成長性を判断するために大事なのです。特に衣食住は絶対になくならない分野ですから、「食」と「住」の分野に注目してみるのがよいでしょう。
今回は3人のプロに、合計9つの「伸びる業界・企業を見抜くための方程式」を提示してもらった。変化が激しい時代と言われるが、結局はその中で同時に変化する「消費者のニーズ」にいかに対応できるかという、“根本的な部分”に敏感な企業は強い。これから起こり得る「イノベーション」に注目するとともに、その影響について冷静な視点で考えることが、近い将来を見抜く近道だといえそうだ。