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迷って一歩が踏み出せない…「キャリア」とは何か?【前編】
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「キャリア」という言葉の意味について考えたことはあるだろうか。同様に、「キャリアアップ」という言葉についても、何を、どうすることがキャリアアップなのか、具体的なイメージはできているだろうか。ビジネスパーソンとして、「キャリア」というものを意識することはとても大切なこと。しかし、実は曖昧なまま使ってしまっていることも多いはず。今一度、あなた自身にとっての「キャリア」の意味を考えるために、独自のキャリアを積んできた2人の、「キャリア観」を紹介する。
これまでに経験した転職回数は、実に12回。25歳でファンドマネージャーという職を選択して以来、運用に関わる仕事を核にしたキャリアデザインを進めてきた。現在は楽天証券経済研究所で客員研究員を務めながら、経済全般やビジネスの分野でも活躍する山崎元氏に、自身の「キャリア観」について聞いてみた。
私はキャリアという単体の言葉ではあまり使いません。「キャリアプランニング」などの文脈の中で使うことが多いのですが、辞書的な意味の”職歴”に近いものとして「キャリア」を捉えています。しかし世間ではしばしば、”キャリア官僚”という言葉がまさにそうですが、一種の価値を帯びた言葉として使われています。
職業的な人材価値とは、「能力」と「実績」の2つによって評価されます。ある職業の仕事をこなせるだけの能力を身につけなくてはいけませんし、その能力を発揮して実績を作らなければいけません。どちらが欠けても、人材価値の高い人とはいえません。そして、能力を磨くことも実績を作ることも、それなりの時間を要します。私の考えでは、30代前半がビジネスパーソンとしての能力の最盛期です。その30代前半を、仕事を覚えた状態で迎えるためには、20代のうちから計画的・戦略的にキャリアプランニングについて考える必要があるでしょう。そのようにして育まれた人材価値を支える職歴が、「キャリア」ではないかと思っています。
私はこれまでに12回転職を経験しましたが、最初からこのような人生設計をしたわけではありません。遠い将来の目標のためではなく、そのときどきの状況を考えながら転職を決断してきました。
振り返ってみると、私にとっての「転職の目的」は3つあったように思います。
1つ目が、特に20代から30代前半までの「職を覚える(高める)ための転職」です。能力を身につけ、高めるために必要だった転職です。
2つ目が、30代半ばからの「仕事の場を得るための転職」。職業的なスキルを一番有効に使える場所がどこか、大きな仕事ができるか、一緒に働く仲間や報酬なども含めた「場」を選んでいく転職です。
そして3つ目が、「ライフスタイルに仕事を合わせるための転職」です。これは、主に人材価値を確立した段階からもう一歩先の働き方を選ぶことで、セカンドキャリアも視野に入れてのものです。
皆さんが目標設定していく際、あまり先のことを考えすぎるのは効率的ではないと思います。
短期的には「2年先」。長期的には「35歳でどうなっていたいのか」。この2点でいいでしょう。
35歳までの時間というのは、ビジネスパーソンとして最も能力が伸びやすく、実績も作りやすいため、人材価値の土台を固めるうえで大事な時です。35歳の時にビジネスパーソンとしてどうなっていたいのかをイメージしつつ、そのために今できることが何か、身につけるべきものは何かを考えていけばいいと思います。
その際、1つのことを経験しスキルを習得していく単位としては、1年では短すぎる。私の経験からいっても、何かを習得するのに「カーブを描いて上昇できた」と実感できるのは、2年間程度の期間である場合が多いです。だから、長期的な視点を持ちつつも、まずは2年先の自分がどうありたいかを考えることで、今の時間を有効に使えると思います。
2年前の自分を振り返ることもしてみてください。「この2年間で自分は進歩しているか?」を点検するのです。もしできていないと感じたら、理由を考えてみる。そこに、2年先や35歳の自分について考えるヒントが隠されていることがあります。
株式会社楽天証券経済研究所
客員研究員 経済評論家
山崎 元氏
三菱商事就職後、12回の転職を経て2005年より楽天証券に。2010年より獨協大学特任教授も。株式投資や資産運用を中心に経済全般についての著作、論文を多数発表。転職・キャリアに関する執筆も多い。
(リクナビNEXT/2012年11月14日)