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世界を舞台に働きたい 「グローバル人材」になるには?【前編】
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ビジネスにおいてグローバル化が進み、世界を相手に戦うことは、一部の特殊な人たちだけのものではなくなっている昨今。そんな中、「グローバル人材」に注目が集まっている。グローバル人材として活躍できる人の条件は?求められる英語力は?どんなスキルが必要?狙い目の業界や、今後ニーズが高まる職種は?最新トレンドも含めて、専門家に話をうかがった。
現在、日本で「グローバル人材」と呼ばれるビジネスパーソンは、勤務地を問わず、日本語以外の言語を使って活躍する人材を指すケースが多い。具体的には、海外市場や外国の文化に精通し、外国語を駆使しながら海外との高度な交渉とマネジメントを行える人材、といえるかもしれない。
では、その中でも上図の赤色部分、日本に進出している外資系企業については、実際にどのような人材ニーズが発生しているのか。どの程度の英語力が必要で、求められるスキルはどのようなものなのか。外資系企業に特化した人材紹介を行うオプティアパートナーズに「業界動向や最新トレンド」を、海外を舞台に活躍する元・日本コカ・コーラ副社長の射場瞬氏には、「活躍できる人材の条件」を聞いたので、紹介していこう。
日本進出外資系企業の業界動向と最新トレンド
現在、日本には約2500社の外資系企業があるといわれています。
その中で求人件数が比較的安定しているのが、アメリカやヨーロッパからの進出企業に多い医薬品や食品など生活用品を扱う消費材メーカーです。景気に左右されにくく、生活に密着しているために需要と供給のバランスが大きく変化しないのが特徴です。一方で、リーマンショックや欧州金融危機の影響が直撃したのが、アメリカやヨーロッパ、アジアから進出している不動産や金融業界です。同じく影響を受けたドイツに多い自動車業界や、フランス・イタリアの高級ファッションブランドメーカーなどは、ここにきて回復傾向にあります。
求人ニーズが最も多く、今後も増えていく可能性が高いのがITです。シリコンバレーに代表されるように、特にアメリカが強いところですが、「スマートフォン」や「クラウドコンピューティング」の分野では、世界的に多くの企業が成長し、人材採用も活発化しています。
スマートフォンに関連する企業、例えばベースステーションを作っている設備メーカーや、端末やアプリケーション、各種サービス、セキュリティなどにまつわる周辺ビジネスが全般的に好調で、人材ニーズが高まっています。具体的には、スマートフォンに搭載されるソフトウェアの開発エンジニアや、そうしたソフトウェアを導入するためのコンサルタント、PMです。また、ゲームやSNSなどのアプリケーション開発エンジニアといった職種も注目されています。
また、「クラウドコンピューティング」は今後確実に伸びていく分野です。そのなかでも営業職(プリセールスエンジニア、ポストセールスエンジニア)の需要が高くなっています。また、大規模案件に対応できるソリューションアーキテクトのニーズも高まっています。
消費材メーカーでは、マーケティングやブランドマネジメント、ロジスティクスの知識がある人材のニーズは常に高くなっています。ロジスティクスの知識という点では、Eコマースの分野でもニーズが多数発生しています。特にSEMコンサルタントやSCM(サプライチェーンマネジメント)、あとはSNSを使ったオンラインマーケティングの知識がある人材には注目が集まっています。
即戦力を求める外資系企業への転職のハードルは低くはありません。転職を考えたら、まずは自分の専門を自覚し、アピールできることは何なのかをよく整理しておくことが大事です。そして今いる環境で、語学力や実績を磨き、人脈をつくっておくことが大切です。実際に面接ではどのような観点がチェックされているのでしょうか。
<語学力>
どの職種にも必須となるのが英語力です。消費材などのメーカーは、市場が海外に向いているため、クライアントとのやりとりのためには高度な英語力が求められます。物流関連も、社内調整や海外の物流会社との商談の際は専門用語を知っていないといけません。特に今は中国や台湾などにアウトソーシングする企業が増えたため、SCMなどは英語での取引ができないとサプライチェーンに指示ができません。
クライアントが日本人だとしても、上司が外国人で日本語が話せなかったり、本社と定期的なやりとりが発生する場合も多く、英語力は採用の際の大前提となります。TOEICの点数などの基準を設ける場合もありますが、ほとんどの会社が面接(英語インタビュー)の中でスキルを評価します。例えば、営業職では「今、売っている商品を英語で私にプレゼンしてください」といった質問は必ずされるでしょう。プランニングなら「あなたがこの会社を経営するならどんな方法で取り組むか」といったふうに。どの職種でも「前職での仕事」と「入社後の仕事」について、英語で答えさせることによって、英語力を判断します。
<資格>
プランニングやマーケティングについては、過去の実績も大事ですが、MBAや証券アナリストといった資格の有無が大事です。特にMBAについては、取得した大学も見られます。アメリカのアイビーリーグや、ロンドン・ビジネス・スクール、INSEADなどのヨーロッパのビジネススクールなど名門大学であると、やはり面接官の注目度が高くなります。
一方で、人事や経理、法務などの職種は、基本的なスキルが身についている場合、業界未経験でも採用となる場合があります。いずれにしても、外資系の採用は即戦力人材であることが基本ですから、前職での実績はとても重要です。「ポテンシャル採用」や、研修しながら育てていくなどの発想は外資系企業にはないと考えていいでしょう。
<異文化の受容性>
スキル以外の面で気にするのが、「文化を受け入れられるかどうか」という問題です。「個人主義」などと形容されるのが外資系企業の特徴。例えば、長く日本の大手企業で働いていた人が、シリコンバレーの中小企業に転職する場合、社風や環境があまりに違いすぎて文化になじめないことが多いのです。いくらスキルや実績がマッチしても、働く企業の出身国のカルチャーが理解できていないと採用には至りません。そのためには、海外で生活して文化を知っておくといいでしょう。今の勤務先に海外支社があれば、手を挙げて働きに行ってみるのも有効かもしれませんね。
<人脈>
そして、最後にものをいうのが、実は「人脈」なのです。特に営業職に顕著ですが、「○○という会社に知り合いがいて、商談が持ち込める」といったルートを持っていることは、貴重なアピールになります。というのも、外資系企業は日本国内であまり人脈を作れていない場合が多く、その部分を転職者に期待しているからです。
オプティアパートナーズ株式会社 代表取締役 マックス ナイト
オーストラリア出身。1992年より東京在住。1997年以降は金融サービス業界でのリクルーティングに携わり、数多くのグローバル企業や日本企業の採用活動をサポートする。2002年5月、取締役のニック・ジャマンティスとオプティアパートナーズ設立。会社全体の運営に加え、金融サービス業界や、プライベート・エクイティ投資など、不動産関連に重点を置いた投資銀行部門全般の人材紹介を担当。
(リクナビNEXT/2012年1月25日)